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♪恋はなんとも言い表せないの    1966.09録音
 LIEBE KANN MAN NICHT BESCHREIBEN
    作曲:Heinz Kiessling 作詞:Hans Bradtke
    演奏:Heinz Kiessling Chor und Orchester

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★★ ★★★★

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ザ・ピーナッツがドイツで活躍していた時期に録音したオリジナル曲の一つです。
この曲の詳しい解説は☆ピーナッツ・ホリデー☆に掲載されています。
☆ピーナッツ・ホリデー☆では、EPジャケットと歌詞も紹介されています。
 レコード・テープ等→◆海外盤 で見ることが出来ます。
ここを見ないと、CDに原語の歌詞もないし(どうせ、あっても意味不明だけど:笑)
いったいどういうことを歌っているのかさっぱり理解出来ないと思います。

何となくですがハイスクール程度の年齢の女の子がクラスメイトと「恋」についての
談義をしているような感じの歌詞です。
それもすれっからしの遊び女じゃなくって、恋に恋するという幼さがあるようです。
1966年というと、ザ・ピーナッツももう25歳くらいですから、我々の感覚では
ちょっと歌手とはそぐわないような気もするし、こういう歌は歌わせないでしょう。
でも、ピーナッツはドイツでは、7歳くらい若く見られていたらしく、そうすると、
18歳くらいで、それでも向うのその年齢よりも子供っぽく見えるのかも知れません。

だから日本ではとっくに卒業した「悲しき16才」みたいなフィーリングがフィット
したようにも思います。
だって「悲しき16才」を歌った時、ピーナッツは18歳だったけど似合ってたもの。
別に若くサバ読んで売り込んだわけじゃなくて、その歳しか信じてもらえない状況で
やむを得ないというところだったようですね。
どうしても男女ともに日本人は未成熟に見えるようで、ピーナッツも、まだこれから
背が高くなるのだろうとか思われていたのかも知れません。もともと童顔だし。
そういうことから「大人の恋」というイメージはこの歌からは感じられません。

音楽もコミカルというのではありませんが、キュートでお茶目でかわいいのです。
本人達は大真面目でも傍から見てると、ああ、まだ子供だなあという感じかなあ。
サビのところのメロディーなんかは切々と歌っていて背伸びをする少女という感じが
出ていて、とっても愛らしいです。
この歌は好きですね。思わず通勤時に口笛吹きたくなるようないいメロディーです。
恐らく、1キロメートル以内にこの曲を知ってる人は居ないだろうというところが
ある意味で愉快ですね。

演奏はこれ凄いです。このブラス(金管楽器)は只ごとじゃありませぬ。
日本での録音でのミュージシャンだってピーナッツのレコードでは達人揃いだろうと
思うのですが、上には上があるなあ、という印象を持ってしまいます。
トランペットもトロンボーン(特にバス)も凄い切れ味で、音の伸びが違うんです。
なんかもう分厚いステーキを食べてる人と、海苔や納豆食べてる人の違いのよう。
それにポップスの伴奏というのはこうやるんだよ、というお手本みたいです。
伴奏がメロディーとは全くかけ離れていることをやってて見事に調和するんだもの、
アレンジもひと味違うなあと感じます。

録音の技術もかなりのレベルだと感じる明晰さがあるのですが、ちょっと硬いです。
これがドイツという風土なのじゃないかなと感じます。
音色にしっかりした「芯」があります。ふわふわしていないんです。
ザ・ピーナッツの声の質もちょっと違って聴こえます。
日本での録音では「暖かい倍音に満ちた声」を残響付加など駆使して作っています。
また空間合成みたいなことも意図されていて妖精の声みたいに仕上げてました。
ところがこの録音では、エコーマシンの種類も違うのか若干金属質の響きがするし、
全体に、曖昧さよりも、がっちり音を捉えようとしているように感じられます。

このドイツ盤のCDを通しで聴くと、少々、耳が疲れる感じがします。
ドイツの方と日本人の耳の感覚が多少違うのかも知れません。好みの問題でしょう。
しかし、ピックアップして聴くと新鮮で、こういうザ・ピーナッツもありだな、と
いった説得力のある完成した音響を持っています。別の良い音の世界です。
それにザ・ピーナッツがちゃんとドイツのDIE PEANUTSに成り切っているところが
凄いなあ、と感じます。ドイツの人に買ってもらえそうだな、と実感が湧きます。

既に日本では色々な歌に挑戦してきたキャリアがあるザ・ピーナッツなんですが、
現地のスタッフには実感としてそういうイメージは浮かばなかったんじゃないかな?
だからきっと天才じゃないかなんて思われたりしたかも知れないですね。
それでも、ちっちゃな二人が懸命に歌うのを見て、むこうのスタッフはサポートを
色々としてくれたようにも思います。
それにこの録音はシングル盤の5枚目なので、手慣れて堂々と歌っている雰囲気も
あって安心して聴けるし、現地スタッフも満足出来るものが出来たと思われます。
こういうCDが、これだけの年代を経て復活するなんて夢のようです。