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さすらいのギター  1972頃(推定)
  MANDSCHURIAN BEAT
   作詞:千家和也 作曲;Liebkind,Johnny Eljon
   編曲:宮川泰(推定) 演奏:不明

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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ネットで調べたネタなんですが、この歌にはかなり歴史があるみたいです。
ロシア軍の一兵士だったシャトロフが戦死した戦友にささげたワルツ曲
On the Hills of Manchuriaが原曲で、1926年頃の作曲のようです。

1963年にフィンランドのバンド=ザ・サウンズの演奏でヒット。
お色直し編曲は、J.A. SCHATROW。
あのベンチャーズも演奏して、むしろこちらが一般的なのかも。

1971年にナベプロ系の小山ルミさんが歌ってちょっと流行った。

このメロディーをワルツ(三拍子)に直して口ずさんでみますと、これは
結構、素朴で郷愁を誘う曲だということがわかります。
原題は「満州の丘に立ちて NA SOPKAKH MANCHZHURII」ということですが、
これもネットで聴くことが出来ました。自分の頭で三拍子に変換したのと
実際に聴くのとはまたちょっと違います。自分のは再変換だからかしら。
ともかく、この原曲自体が有名なものらしいのですが、私は不案内です。

さて、ザ・ピーナッツのバージョンですが....
これが、すんげ〜いいんだ! こんないい歌だったんだっけ、この歌という感じ。
歌自体は昔聴いてよく覚えていたつもりだったのに..これはびっくりしたなあ。
なんでだろう、と思ったら、小山ルミという歌手を私、殆ど覚えていないのだ。
レコードもCDも持っていないのでネットで試聴してみました。

あれれれ...これ、凄くかっこいいじゃないですか、編曲=川口真。納得です。
ピーナッツのものよりパーカッションが効いていて、もろラテン・ビートです。
音楽的に楽しいこれが何故、私の耳に残らなかったのだろう。ちと不思議??
歌唱に入って納得。音程が妖しく揺らぐ歌声。なんかこうフェロモン濃厚。
恐らくビジュアル的な面で私は眼を逸らしていたのだろうと思います。
容姿が悪いのではないけれども自分の好みでなかったからに違いないのです。
こういうの好きな人はハマりそう。良い悪いじゃなくて好みの問題です。

作詞の千家和也さんは山口百恵の一連のヒットの詩を書いたことで有名ですが、
この「さすらいのギター」で作詞家デビューだったとのこと。
そういえば、どこか際どい詩であるところが似ていますね。(笑)
 ♪あなたに全てを 奪われた私
 ♪あなたが望むなら 私なにをされてもいいわ
似たようなことを書いて、どきっとさせる作戦みたいです。確信犯的。
 ♪いけない女の子ね
 ♪いけない娘だと噂されてもいい
どうも「いけない」ことがお好きな作詞家のようでございます。(笑)

もともとが「平和の祈り」を歌い上げた荘厳なメロディーなのに、とんでもない
歌詞が乗っかって、ラテン・リズムにエレキ・ギターと、ミスマッチの極みが
実に奇妙な傑作になっているというところだと思います。
流行った頃に耳にタコが出来るほど聴いていなかったので、私には新鮮です。
先日は、これを聴いていて、あんまり良くて、背中がゾクゾクっとしました。
おまけに、途中から目頭まで熱くなって、涙まで滲み出てきて慌てました。
そんなに感動する歌じゃないよね。なのに、なんなのだろう。ジーンとしました。
恥ずかしながら、私、このCDの中で、これが一番のお気に入りなんです。

このアルバムは好きで、ちょいちょい聴いてます。
タイトルの「ナオミの夢」はあまり好きじゃないけど、あとは大概いい感じです。
特に「恋の衝撃」「愛の泉」が好きだなあ。もともといい歌なんだろうけど。
ピーナッツは早い歌よりもじっくりと歌う曲が好きなんだそうですが、私は、
速めの歌が大好きです。悲しい歌でも物凄いスピードでやったのが好きです。
「悲しい酒」より「勝手にしやがれ」が好き、というところでしょうか。
こういうヤケクソのハチャメチャ加減がいいんです。
ピーナッツの歌でいえば「恋のオフェリア」「恋のフーガ」なんかがこの範疇。
あの奇想天外な伴奏、あのリズム感覚で、悲愴な歌詞がついているのがいいなあ。

聴いていると何にも危なげのない伴奏ですが、良く聞き込むとかなり上手い。
プロなんだから上手くて当たり前だし、下手な伴奏なんて世にないのだろうけど
このように聞かせ所のツボをきっちり押さえて軽快に弾くというのは大したもの。
ギターが主役だけど、ドラムなんかも、こういう鳴り方の演奏、録音というのは
最近はめっきりなくなったように思います。全て電子音化しちゃってますからね。
好き好きだから決めつけちゃいけないだろうけど、その楽器の持つ素材の天然の
響きが出ている方が私は楽器演奏らしくて好きです。
付帯電子音がたくさん装飾していると響きが充満して隙間がなくなってくるので
なんとなく一丁上がりと聞こえるんだけど何だか人工的で飽きが来てしまいます。
サウンド指向もいいけれども、結局、大枠では似てしまうように感じます。

さすらいのギターは、歌も饒舌ではなく、味覚もシンプルで、どういう気分の
時に聴きたいかが鮮明でストレート。単純なのが魅力じゃないかとも思います。
特にザ・ピーナッツが歌うことによって付加価値も付いて、私には魅力倍増。
出来れば、ザ・ピーナッツ・ポップス大全集とか歌謡大全集、なんでも大全集
なんてものがこの世に存在すればいいのに、と夢想してしまいます。

(2004.9.22記)