初笑い ほんとにクレイジィだよ! ザ・ピーナッツ(日劇)

昭和39年1月7日〜13日

<出 演 者>

ザ・ピーナッツ
   伊藤エミ
   伊藤ユミ
---------------
浜   美 枝
  *
伊藤素道と
リリオ・リズム
   ・エアーズ
--------------
クレージー・キャッツ
ハ ナ   肇
谷     啓
犬 塚   弘
安 田   伸
桜 井 センリ
石橋エータロー
  *
植 木   等

スマイリー小原と
  スカイ・ライナーズ
--------------
金 子 薫 子
進 藤 一 夫
日劇ダンシングチーム
--------------
日劇オーケストラ
  指揮:多 忠修

<スタッフ>

構成演出----塚 田   茂
脚  本----塚 田   茂
    ----城   悠 輔
    ----河 野   洋
振  付----八木沼 陸 郎
    ----竹 部   薫
音  楽----萩 原 哲 昌
    ----東海林   修
    ----宮 川   泰
装  置----小 林 雍 夫
衣  装----小 磯 豊 治
照  明----村 井 嘉兵衛
舞台監督----岸 田 英 弥
-------------------
制  作----池 田 豊 和

今回から「脚本」というスタッフ
表記がされるようになった。
塚田茂、城悠輔、河野洋とくれば
これはもう、シャボン玉ホリデー
のステージ版というところだ。

音楽担当に東海林修先生が初登場。
童謡のコーナーを編曲されてます。
この時期にはシャボン玉ホリデーの
音楽も頻繁にご担当されています。
1月5日と1月12日の放送は
二つとも東海林先生でした。

パレード
  
●ザ・ピーナッツ
  ●クレージー・キャッツ 他・全出演者
華やかなオープニング
第一景 新春に歌う
   ♪恋のバカンス (ザ・ピーナッツ)
   ♪ホンダラ行進曲(クレージー・キャッツ
オーケストラ・ピットはエプロン・ステージとの間に
潜っているのだが、ここからの伴奏というのもなかなかに
いいもので、トロンボーンの音などがいつも以上に響きます。
第二景 思い出の歌  音楽:東海林 修
   ♪七つの子 (浜美枝)
   ♪ふるさと
   ♪花嫁人形 (ザ・ピーナッツ)
父親と子供達
    クレージー・キャッツ
この景だけ、音楽を東海林修先生が担当されている。
ピーナッツはこの舞台だけではなく、色々な場面で
童謡・唱歌などを歌うことが多かった。
また、それが本業(?)のポピュラー・カバーや
当時、無国籍歌謡と言われたJ-POPよりも
良かったり(笑)するのが面白いです。
第三景 クレージーのヒット・メロディー
      演奏:クレージー・キャッツ
♪テーマ(クレージー・リズム)演奏
♪高校三年生   (植木 等)
♪恋は神代の昔から(石橋エータロー)
♪ヘイ・ポーラ  (犬塚弘・ピーナッツ
          ・伊藤素道)
♪けんかでデート (安田伸・桜井センリ)
♪悲しいメドレー (谷啓ほか)
♪島のブルース  (植木等ほか)
♪大脱走のマーチ (全員)
♪今日は赤ちゃん (全員)
♪テーマ演奏

楽器を持ったクレージーは底抜けに面白い。
晩年はあまり見られなくなったシーン。
これが当たり前で、これをずっと続けてくれると思った。
ピーナッツと伊藤素道が入るのがこれまたいいのだ。

伊藤素道さんは一応普通のコーラス路線だったが、
センスはクレージーの仲間に入ってもおかしくはない。
まあ、つまり、ミュージシャンはコメディアンの素質が
ある人が多かったのではないでしょうか。

第四景 ピーナッツは歌う

♪ノン・ムッシュ    (ザ・ピーナッツ)
♪カモンナ・マイ・ハウス(ザ・ピーナッツ)
♪踊り明かして     (ザ・ピーナッツ)

日劇のステージではショーとしての構成が第一優先。
もっとたくさんピーナッツの歌を聴きたいという不満も。
しかし、ピーナッツ・ファンだけがお客様ではない、
という思想を感じる。

歌をもっと聴きたいという面も、全体の面白さ楽しさを
これだけ見せつけられれば納得せざるを得ないだろう。

第五景 リリオは歌う
♪メドレー (リリオ・リズム・エアーズ)
今回のステージではナベプロのニューフェイス歌手や
若手の人気歌手の出演はなくて、ベテラン揃いです。
このリリオのように、しっかり聞かせるグループの歌唱は
華やかさはなくても、落ち着いていて素敵だと感じました。
第六景 クレージー海軍作戦
(配役)
 プリンセス(浜美枝)
 兵曹長  (谷啓)
 水兵   (ハナ肇、犬塚弘、安田伸、
       桜井センリ、石橋エータロー、
       植木等、松崎真、ナベオサミ)
 広瀬中佐 (植木等)
 白バイ警官(植木等)
 工事人夫 (植木等)
 シャボン玉(ザ・ピーナッツ)
 セーラーのラインダンス(NDT:女性41名)

どんなコントだったのか全然覚えていません。
でも、私の知る限りの範疇では、日劇に於けるクレージーの
コントは少なくとも日本一です。もう最高です。
また、これは残された映画などでは味わえないものなのです。
何故か、ザ・ピーナッツの舞台で共演した場合のそれは特に!
どうしてなのか理由はわからないけど、組み合わせの妙なのか。

抱腹絶倒。観客の反応も凄い。これが更に舞台を盛り上げる。
後日、必ず日曜日にテレビで録画舞台中継放送されたのですが、
ギャグなどが微妙に変化していた記憶があります。
客席の反応を見て、変えていったのだろうと思います。

ピーナッツのシャボン玉って一体なんだったんだろう???
奇想天外な脚本なので、プログラムじゃ何もわかりません。

第七景 ピーナッツとリリオ

♪アニバーサリー・ソング
         (ザ・ピーナッツ)
         (リリオ・リズム・エアーズ)

奇しくもピーナッツの苗字と同じ伊藤素道さんのグループとの共演。
アニバーサリー・ソングってどんな歌だろうと思っていたら...
これは運動会などのBGMでもお馴染みの「ドナウ河のさざなみ」。
背筋がゾクゾクっとするほどの素晴らしさでした。

ピーナッツと男声コーラスという組み合わせはハーモニーが分厚くて
これも最高じゃないかと思ってしまいました。
残念ながら後年に引退してしまうのですが、ザ・ピーナッツとしての
活動は終焉させたとしてもこのような別ユニットでの音楽的な活動を
たまにでも良いから、やってほしかったような気がします。
たとえ歌だけでも、ザ・ピーナッツはそれだけの魅力はあります。

第八景 ヒット・パレード
    演奏:スカイ・ライナーズ
♪めんどうみたよ (植木 等)
♪図々しい奴   (谷  啓)
♪学生節     (クレージー・キャッツ
♪東京たそがれ  (ザ・ピーナッツ)
♪ダンケシェーン (ザ・ピーナッツ)
♪フィナーレ   (全員、NDT)

  注:NDT=日劇ダンシング・チーム

プログラムには植木さんの「どうしてこんなにモテるんだろう」も
入っていましたが、ショーの構成上の理由でカットされたようです。
シャボン玉ホリデーもそうですが、日劇の舞台は歌を売り込む要素は
排除して、あくまでお客さんを満足させることに集中しています。
プロのショービジネスの凄みというものをいつも感じていました。
日劇のザ・ピーナッツの舞台を見た人間としては、それ以外の歌手の
ショーなどは甘ちょろくて、だらだらしてて観られません。
このようなレベル意識の継承というのは何故誰も真似しないのだろう。
渡辺プロの凄さというのは、本当はこういうところなんですが....

「東京たそがれ」が初登場しましたが、全然いい歌だとは思えなかった。
真価は東海林修先生のリ・アレンジまで待つことになったわけですね。
(ウナ・セラ・ディ東京として、この年の9月に再発売されました)

「ダンケ・シェーン」は凄いアレンジとサウンドに圧倒されました。
(宮川先生が外国の譜面を見て驚いて、負けられないと頑張ったとか)
レコードでもその片鱗を聴くことが出来るのは同じアレンジだからです。
しかし、スカイ・ライナーズの金管&木管、日劇オケの弦を駆使した
生音の立体的でゴージャスな音響は圧巻でした。

舞台スナップ(渡辺プロ友の会2月号より:昭和39年)

ステージレポート(渡辺プロ友の会2月号より:昭和39年)

1月7日より一週間、有楽町駅前日本劇場で”初笑い、ほんとにクレージーだよ
ザ・ピーナッツ”と題して、ハナ肇とクレージー・キャッツ、ザ・ピーナッツを
始め、東宝の浜美枝、スマイリー小原とスカイ・ライナーズ、伊藤素道とリリオ
・リズム・エアーズと豪華メンバーの為、連日大入り満員。

 クレージー・キャッツの各人、去年にまさるクレージー(狂い)ぶりを発揮し、
満場爆笑の連続。ハナ肇は初めから終わりまで、ちょっと”ぬけた”役どころを
こなし、植木等が学生服で舟木一夫の”高校三年生”を歌い、石橋エータローは
畠山みどりの”恋は神代の昔から”をハカマ姿で登場。センスを開けども開けど
も、ちっとも開かぬところで笑。犬塚ワンちゃんが一人ニ役で”けんかでデート”
のパントマイム。男女両役を上手に演じ、ラブシーンに於いては客席が爆笑し、
その上、歌っている伊藤素道まで笑ってしまい又爆笑。
 スマイリー船長の演奏する”星条旗よ永遠なれ”の曲に合わせ、谷啓タップを
みごとに(?)踏みました。これに続き、安田伸・桜井センリと、皆さん充分に
笑わせてくださいました。今年も”笑い”はクレージー・キャッツが”めんどう
みたよ”といったところ。

 ザ・ピーナッツのエミちゃん、ユミちゃん、増々歌に味が出て、容姿も一段と
美しくなり、1964年にファイトを燃やしている様子。
スタンダード・ナンバーを次々歌い”カモンナ・マイ・ハウス”ではフィーリング
による歌い分けをみごとにこなしていた。

和製のクレオパトラといわれている浜美枝も兵曹長の谷啓を始め、クレージーの
面々にホレられる美しいプリンセス役を熱演。
伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズもエプロンステージでクレージー・キャッツ
とは又違った面白さをみせていた。

この舞台、タイトルのごとく、終始、爆笑の連続であった。
今年も人気・実力最高のザ・ピーナッツそしてハナ肇とクレージー・キャッツの
活躍を期待しよう。

社長紳士録という映画を併映していましたが、退屈そうなので観ないで帰りました。(笑)

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