この8月、CD付きの「青春のメロディーチョコレート」を発売するのは江崎グリコ。
開けてみるまでわからないが、一世を風靡したキャンディーズなどの18曲か、事前には
公表しない「シークレット」数曲のうち1曲のCDが入っている。
 当時は直径17センチのドーナッツ盤で発売されたレコードを直径8センチのCDで再現。
ジャケットは当時のデザインそのままで復活させた。
中高年なら「懐かしい」と声をあげてしまうかもしれない。
 料金は300円だが、肝心のチョコレートは2個だけ。原価は「企業秘密」(関係者)
ということだが、”主役”は間違いなくCD。
 このアイディアをグリコに提案した企画会社エニライツの近藤圭介さん(36)は、
「昔、レコードは宝物だった。買う時、一枚一枚ドキドキしたもの。あの感覚を再現させ
たかった」と語る。

 ただ、CDのおまけは、グリコが初めてではない。ライバルのブルボンが、2年前に新人アーティストの
CD付きの製品2種を出した。また、今年4月、クッキーに尾崎紀世彦の「また逢う日まで」などのCDを
付けた「懐メロクッキー」を、ローソンとタイアップで売り出した。期間限定の販売だったが、好評のため
今も販売中。同社は「手探りでやっているが、今後もこの方向を進めていきたい」と話す。
 お菓子のおまけ商法は江戸時代から各地にあった。1927(昭和2)年、大手で初めて取り入れたのが
グリコ。おまけはカードだった。だが、対象はあくまで子供だった。
 大人にブームが拡大したのは、99年。フルタ製菓の卵形チョコレート「チョコエッグ」(1個150円)。
中に動物フィギュアなどが入っていた。子供対象の製品だったが、大人が買い続けている。
 大人向けの第1次おまけブームの主役は、「チョコエッグ」のようなフィギュア。同業者や玩具、ホビー
業界まで次々と参入。グリコも1年半前から「タイムスリップグリコ」シリーズを発売。鉄人28号の玩具、
昭和の乗り物など、”懐メロ”路線のフィギュアを付けた。これが見込みの3倍もの売り上げを記録。主な
顧客は「20代から40代、と女性」(同社)と、やはり大人。
 フィギュアが大人の鑑賞に堪える精巧なものだったこともある。またフルタの広報担当は「フィギュアだけ
買うのは抵抗があるが、コンビニの菓子コーナーにあると、買いやすい。何が出てくるかとか、集める楽しみ
もある」と説明する。

 CDは、大人のおまけの”第2ラウンド”ともいえる。
 音楽業界の反応は....。渡辺音楽出版の中島ニ千六専務は「おまけということに抵抗があったが、
旧譜を活性化させるという意味ではいい。グリコでは、ミニチュアとはいえ、レコードの溝までも
再現。音楽文化や時代への理解が深まる」と期待する。
 グリコは「青春のメロディーチョコレート」を第一弾だけでも350万個の販売を予定している。
同数のCDが売れるわけで、音楽業界にとっても新たな市場開拓につながる。
 CDだけではない。ネスレは今月(5月)岩井俊二監督のショートフィルム(15分)の特別
バージョンDVDを付けたキットカットチョコ(1個300円)を発売。映像までおまけになった。
ゆくゆくは、懐かしの名画が、おまけで見られる時代が来るかもしれない。
 進化を続ける玩具入り菓子。音楽・映像の次は、絵本をおまけに、と出版業界参入のうわさもある。
 おまけは、今や日本の”文化”とさえいう人もいるのだが.....。

(東京新聞 2003年5月20日朝刊より)

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