大衆娯楽小説、サラリーマン小説、ユーモア小説、そういったジャンルの大家である
源氏鶏太の読売新聞連載を映画化したのが、この「実は熟したり」であるが、映画化
された源氏鶏太作品は80本ほどあるそうなので極めてありふれた映画ではある。
現代の映画はテレビを超えた何かがなければ観客動員が出来ないが、昭和34年では
まだ映画が庶民の娯楽の中心であってテレビのない家庭も多かったし、映画スターは
映画でなければ見れない時代でもあり、現在のテレビドラマ程度の内容でも十二分に
お客さんを映画館に呼べたので、この作品のように肩の凝らないインパクトの少ない
映画でもそれなりに営業出来た時代だったと思います。             
映画のストーリー展開や映像の出来映えなどではなく見どころは当時の市街地ロケや
中流家庭の生活などがふんだんにあるので、そういう視点で見ると面白いと思います。
画質や色調は大変に綺麗です。放送時の高画質化がされているのか、ご提供頂いた方の
処理が上手いのか、私には詳しくわかりませんが、とても美しいと感じました。  

昭和34年9月17日公開。 上映時間=101分